自他の境界線

公園で、まどかと遊んでいた。
「かくれんぼ、しよう?」とまどかが言う。

私は目を手で閉じる。
まどかはがさごそと動いている。

「もういいかい?」とまどかが言う。

いやいや、それを言うのはこっち。

しばらくすると「もういいよ」とまどかが言う。

目を開けてみて、思わず笑う。
ベンチの陰に隠れているつもりなのだろうが、丸見えである。
自分の目を隠せば、他の者の目も利かなくなると思っているらしい。


少し間を開けてから、
「みーっけ」
まどかは喜んで、もう一度試みる。

一人二役分の「もういいかい。もういいよ」の後、目を明けると、今度はあろうことか砂場のど真ん中にしゃがんで目を一生懸命閉じている。

自分が目を閉じていれば世界もまた目を閉じていると思っている。

〈自他の境界線〉と言うが、私たちの心はその始まりにおいて、こんなにも境界線のない世界に生きていたのかと知って、驚かされた。
何と無垢なものではないか、心というものは。


子供の移ろい易い成長の過程。
ちょっと難しいものを感じていた近頃だったが、良い感じになってきた。

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