いつかは受け入れなくてはならないこと1
重い話です。
しかしとても大切なお話です。
Aさんのお母様の件で、ご連絡があり、Aさんは最後にこう書かれました。
「母の気持ちが死の方向に傾かないように願っています」
これについて私は思う所があり、Aさんの願いに反する、しかし大切だと思われる助言があるので、これをお伝えすることが望まれているかどうかを確認の上、以下のようにお話しました。
「「母の気持ちが死の方向に傾かないように」とのことですが、現実には死の方向に向かっていますので、お考えを変えられてみて下さい。
冷酷に聞こえるかもしれませんが、事実は事実として受け入れることが望ましいことです。
別れの痛みを引き受けて見方を改めることで、今にふさわしい交流が始まることでしょう。
言うまでもないことですが、人は誰もが最後は死ぬものです。
これを愛ゆえに遠ざけたくなるのは人情ですが、そうすることによって大切な時間を失うことになりかねません。
人によっては、その最終的に行き着く所にまだ遠く、人によっては近くにいます。
それだけのことです。
いつとは申し上げませんし、分かることも出来ませんが、お母様そしてご家族がお母様の一生を振り返り、感謝や愛や尊敬を伝え合うのに、最も適した時が今なのです。
その上で、これからお母様が出来得る限りで健康を保たれ、長く良い時間を過ごすことになるということも、あり得るのですよ。
モルヒネについての考えも変わってくると思います。
何が正解とは申しません。
しかしモルヒネを使わないことによって死を一日でも遠ざけることが出来ても、やはりまた次の一日は来るのです。
だからそれは本当の意味では達成とは言い得ません。
本当の達成は心の平安を受け入れ、人生を振り返って満足することです。
死に克つことではなく、死に向かって静かな心で歩いていくことを、お母様には勧めて差し上げてほしいと思いますし、ご家族はその歩みに足取りを合わせていかれますよう。
望ましくは、このことをゆっくりとお話し合いになり、お母様からたくさんの思い出話や教訓を引き出して差し上げて下さい。
ご家族の皆様ならきっとそれがお出来になるでしょう。
分からないことがありましたらお伝え下さい。
出来る限りお力になりますので」
正直、これがどう伝わるか心配でしたが、Aさんは神妙に受け入れて下さいました。
「河邊さん、アドバイスをありがとうございました。
そうなのですね。遅かれ早かれ死に向かっていますね。
母との大切な時間を失うところでした。
息子にも伝えて、考えを改めたいと思います。
寂しいことですが、事実を受けとめて、心温まる判断をして対応していかなければと感じています。
本当に貴重な御指導に感謝いたします」
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