6子に教える
おもちゃやぬいぐるみを見ると、まどかはそれを欲しくなる。
切りが無いことなので、私は機会を限って買い与えたい。
生活環境の諸々の理由によって、なかなか私の意志を押し通すのが難しい。
しかしまどかという「外なる子」と共に自分の心の「内なる子」を優先するようになった私は、先日、拒絶を押し通した上で、後ほど理由を教えた。
まず、お金には限りがあるのだから大切に節約しながら使わないといけないこと。
次に、好きなものは数が少ないことによって大切さが増すということ。
「おとうちゃんにまどかの他に100人子供がいたらどうなると思う。
まどかと遊んであげる時間は、きっとずっと少なくなるね。
まどかに気付いてあげることさえ、出来なくなるかもしれないね。
まどかはおとうちゃんのたった一人の子供だから大切なんだよ。
ぬいぐるみもそうだよ。
たった一つあることによって、まどかにとって大切なぬいぐるみになるんだよ。
沢山あったら、まどかと遊んでもらえないと思って、ぬいぐるみは泣くんじゃないかな。
それはかわいそうなことじゃないかな。
多く持たないことはとても大切なことだよ」
すると私がそれ以上言った訳でもないのに、まどかは「じゃあ、あんまりいらないおもちゃとかぬいぐるみは、他の子にあげることにする」と言い、私は感心した。
そしてこれは、私自身が自分の「内なる子」を無視せず、まどかのおねだりや涙まじりの訴えという波を被っても心の内なる島が沈まないように保ったことによって得られた自然かつ健全な反応なのだと直感した。
「でも、ぬいぐるみは二つか三つくらいはあった方がいいよね。ぬいぐるみ同士が一緒に遊べるから」とまどかは言い、「それは確かにそうだ」と私は言った。
一緒に暮らしていないので、それから彼がどうするかは知らないし、そこは関与できないけれど、この会話そのものは、とても良いものだと思われた。
またこのような会話は、私が親子の間でしたいと昔から望んでいたことでもあったことにふと気付いた。
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