9 不眠症と夢の象
暫くましになっていたのだが、この数日間、不眠症がまた猛威を振るうようになった。
布団に入ると目が冴えて眠れなくなる。
さっきまでの眠気がどこかに行ってしまう。
そしてどれだけ待っても戻ってきてくれない。
困ったことに、その日の体の状態とは関係なく起きるので対処も出来ない。
しかしこれにはきっと何か訳がある。
そう思って自分の中に入っていった。
体が横になると、縦になるもう一つの体がある(ように思える)。
私の中に、眠りたくない誰かがいるのだ。
なぜだろうと考えると、多分、そうして夜の何も出来ない時間に出現することによって、私にその存在を伝えたいのだ。
普通、不眠症はストレスから来る。
でも心当たりがない。
とは言え、心は重層的な構造をしており、認識の光が届かない深層がある。
きっとその領域なのだ。
それが何なのかは分からないが、ともかく意識を向けるようにした。
間もなく眠気がやってきた。
夢の中で私は動物たちの走り回る只中にいた。
概ね平和的な場所で、動物たちはそこで自由にしていた。
私は象を認めた。
象も私を認めた。
象は子供で、鼻がなかった。
でも怪我をしたり奇形だったりする訳ではなく、ただ「そういう象」だった。
私と象は、触れ合おうとして互いに近寄った。
そして目が覚めた。
随分長い時間、眠れていたようだ。
そして目覚めは気持ちよかった。
そこで私はこれから暫く、心のこの名も無い領域、夢の象がいた領域に、アンテナを伸ばそうと考えた。
コメント