19 本当の自分らしさを探して
私は一家の中では異端児で、ただ一人、芸術の完成と、ヒーリングの能力を生まれ持っていた。
だから私は、その意味で「本当の自分らしさ」を一度も体験することなく、大人になってしまった。
近年になってようやく、自分とはこういう人間だったのだ、ということが分かってきた。
例えば物語を思い描いている時。
私はぼんやりして地上から離れている。
そしてそれを書く時。
私は心の奥底に潜り込んでいる。
一言で言うと、その時間はとてつもなく静かで、澄み切っている。
そのような空気は私の生まれた一家にはなかったし、今もない。
騒がしい。
だから私の無意識はまず、自分にふさわしい環境を創り出すことから始めた。
そのために、かなりの年月がかかった。
痛みの体験も必要だった。
というのは、「本当の自分」を知らないまま生きる中で身につけてしまった人生観は、すべて借り物であり、押し付けられたものであり、それは「本当の自分」が生きるためには破壊され、棄却されなければならないからだ。
しかしそれはぴったりと心に貼り付いているから、「ゴミ箱に移動」というように単純には行かず、文字通りに自分自身を破壊しないといけない。
なぜならそれは、自分自身と完全に一体化してしまっているものだから。
でもそういった年月を経て、自分は前よりも自由になった。
そして日々物語を書くことを楽しむ中で、「本当の自分」らしさを纏った生活の空気を、味わうことが出来ている。
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