66 あるべき自分の姿
上手くしたもので、持ち前の良さが光り輝いていくにつれて、ほれ見たことかとばかりに、占星術は真実を告げるものである。
数年前に、姉のホロスコープを読んだ所、姉は全然ぴんと来なかった。
それもそのはず、「本当の自分」から、まだまだ遠い所にいた。
しかしこの賢い弟と頻繁に過ごすようになる内に、姉の自己実現は加速してきた。
「編み物でもやろうかと思う」などと言い出す。
二つの意味で、印象的だった。
一つ目は、姉が乙女座であることで、乙女座は手芸が得意である。
二つ目は、姉にはこの二十年余り、まったくそのような精神的余裕がなかったことである。
だから私の頭の中で、姉と編み物は結びつかなかった。
「ほら、まあくんに作ったじゃん、手袋を、昔」
その手袋は、30年経った今も使っている。
私は姉に手袋を見せた。
おかしなことに、私はこれを姉が編んだことをほとんど忘れていた。
姉がくれたことは覚えていたのだが、編んだにしては巧すぎる、きっと買ったのだろうと思いこんでいた。
過去が新しい光を引き連れて、現在に蘇ってきた。
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