龍の絵
久しぶりに、絵の制作依頼を頂いた。
辰年の方から、龍の絵である。
早速取り掛かり、数日かけてなかなか良い龍が描けた。
いざ描くとなると、龍は難しい。
〈自分の龍〉を出さないといけないから。
言うまでもなく、龍は実在しない生き物である。
だから全ての龍は、描いた人にとっての〈自分の龍〉ということになる。
ゆえに、龍を描く時、他人の龍を見本にしてはいけない。
〈自分の龍〉であるということ――それが、龍の、恐らくたった一つの存在条件なのだから。
出てきたのは、形だけで言えば〈普通の龍〉である。
角が2本あって、前足と後ろ足があって、たてがみがあって…。
〈自分の龍〉といっても、デザイン面の話をしているのではない。
私が描いたその龍は、天を飛翔するのではなく、力強く地に足を踏みしめていた。
まだ暫く飛ぶつもりはなさそうである。
もちろん飛ぶことはいつでも出来る――しかし今は雌伏の時、力を蓄える時。
伏龍である。
そして見る者(制作依頼者)を試すような笑みを浮かべている。
その笑みがとても良い。
「おまえには出来る。私は知っているぞ」という目をしている。
そんな龍だった。
とても良い機会を頂いた。
絵は、一人ではなかなか描けないものだから。
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