49 涙
誕生日の日に丁度子供向けのコンサートがあり、出かけた。
演奏中はずっと赤ちゃんの声で賑やかだった。
そんな中、私の大好きな一曲が歌われた。
久しぶりに、音楽によってぼろぼろと泣いた。
誕生日に聴かせてもらえたこの曲はきっと天からのプレゼントに違いないと思った。
涙する時、何らかの形で心が洗われている。
実際には、心を洗うということは意図してそう容易に出来ることではない。
あくまでもふとした瞬間に、ふとしたきっかけによって、洗われるのだ。
そして何に泣いているのか分からない。
今まで有り難いことに、描いた絵や音楽によって、人が涙するのを見てきた。
そんな時「なんで泣いてるんだろう」と皆、言ったものである。
ああいう一瞬に、心が洗われていたんだろうなあと思った。
泣ける、というのはとても有り難い体験だと思う。
理由も分からず泣けるのはもっと有り難い。
泣かせるために作られたもので泣くのは不愉快だが、言葉にならない領域で涙が流れる時、それは本当に非言語領域、すなわち無意識の深層に働きかけているのだ。
すべては無意識から生じてくることを考えれば、その涙はそれ自体では数秒から数分のものながら、これから長期にわたって流れ出ていくエネルギーの最初の一滴であるのに違いないのだ。
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