152 海辺にて
子供に海に連れていってもらった。
「海の砂浜で宝石をさがしたい」と子供が言う。
既に正午を回っていたので、また今度ね、と私は言った。
でも子供はそんなこと気にしないので、行きたそう。
最近、私は以前より柔軟になり、いま子供がそう言うんだから、遅くても何でもいま行けばいいか、海に、と思えるようになった。
それでロマンスカーに乗って江の島に行った。
子供が言っているのは多分、波で削られたガラス片なんかのことだろうと思い、砂浜を歩いて拾い集めた。
子供に対しては期待するものがあり、親としての自分自身に対しても期待があり、その関係性にも人生そのものにも期待がある。
そしていつしか、良い原材料だけで出来たはずの「期待」が重荷となって疲れ果てている。
私は、諦めた、というとちょっと言葉が過激に響くかもしれないが、子供とのことは諦めた(=期待値を大幅に引き下げた)。
諦めたら、心の荷物が軽くなって、まあ、自分と一緒にいる時にこの子が楽しい思いをできればいいか、と思えるようになった。
子供も楽しそうだった。
そんな海のひと時だった。
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