153 サボテンのトゲ
ベランダに小さなサボテンがある。
「サボテンて、痛いんだよね」と子供は言う。
「触ってごらん」と私は言う。
手を近付けては、引っ込める。
近付けてはまた、引っ込める。
おっかなびっくりまた近付けて…、引っ込める。
そんなことを何度かしてから、ついに指先が触れた。
そうするともう怖くなくなって、サボテンのトゲを指の腹で何度も撫でては、その感触を楽しんでいる。
怖いものは未知のもので、既知になったら怖いものでは全然なくなる。
人生に起きていることも、だいたいそんなものかと思う。
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